昔むかし、地球にはいろいろな「人類」が暮らしていました。
その中で生き残ったのは、私たちホモ・サピエンスだけ。
なぜ私たちだけが生き残り、文明を作り上げることができたのでしょう?
この記事では、ホモ・サピエンスの強さの秘密と、物語を信じる力、そして今、その力に匹敵する存在――AIが新たに生まれようとしていることについて紹介します。
かつて地球には多くの『人類』がいた
ホモ・サピエンス以外にも、かつて地球にはさまざまなヒト属が存在していました。
- ネアンデルタール人(ホモ・ネアンデルターレンシス)
- デニソワ人
- ホモ・エレクトス(北京原人など)
- ホモ・フローレシエンシス
- ホモ・ナレディ など
しかし、数万年前までにこれらの種はずべて絶滅し、いま地球に残っている人類はホモ・サピエンスただ1種だけになっています。
『サピエンス全史』が描く、人類の進化
世界中でベストセラーとなった『サピエンス全史』(著:ユヴァル・ノア・ハラリ)では、現生人類がどのようにして歴史の覇者となったのかが描かれています。
- 初版:2011年(ヘブライ語)、英語版2014年、日本語版2016年
- 世界66言語に翻訳
- 世界累計発行部数:2,500万部超
- 日本国内累計発行部数:150万部超(2023年時点)
ホモ・サピエンスの強さとは?〜認知革命〜
ホモ・サピエンスが他のヒト属に勝った決定的な要因は、約7万年前におきた「認知革命」にあります。
虚構(フィクション)を共有する力
人類は、現実には存在しない物語や概念(虚構=フィクション)を創造し、それを多くの人々と共有し、信じることができる能力を得ました。
たとえば・・・
「あの山の向こうに大きなライオンがいるよ!」と、眼の前に起こっていない出来事を、見ていない人にも伝えられるようになりました。

「日本神話」を共有することにより、「日本国」に住んでいる者たちとして、面識のない多数の人々が同じ目標や価値観のもとで協力できるようになりました。

「この石はお金として使おう」とルールを作り、経済システムを産み出しました。

こうして、多くの人々が共通の「物語」や「ルール」を信じ、協力し、大きな社会を築くことが可能になったのです。
『べらぼう』に学ぶ、フィクションの力と危うさ
人間は「物語」を信じることで大きな力を得ましたが、それは同時に危うさもはらんでいます。
2025年大河ドラマ『べらぼう』第15話で、石坂浩二さんが演じる武元がこう語っています。
「金というものはいざという時に米のように食えもせねば、刀のように身を守ってもくれぬ、人のように手を差し伸べてもくれぬ。然様に頼りなき物であるにも関わらず、そなたも世の者も、金の力を信じすぎておるようにわしには思える」
— 大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」日曜夜8時 (@berabou_nhk) April 13, 2025
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金(貨幣)も、人間が「価値がある」と信じたからこそ成立した物語です。しかし、それは現実に存在するわけではなく、信じる心がなければただの金属や紙に過ぎません。
フィクションが人を結びつける力になる一方で、過信すれば、もろく危ういものでもある・・・
この二面性を『べらぼう』の武元の言葉は、鋭く教えてくれます。
新たな物語を紡ぐ存在、AIの可能性
これまで「物語を創る力」は人類だけの特権でした。ところが今、人工知能(AI)が新たな物語や神話を産み出す存在になろうとしています。
AIは人間の想像力に匹敵するスピードと規模で、物語、理念、価値観を生成し、拡散できる時代が到来しつつあります。
では、
「AIとホモ・サピエンスは仲良くできそうですか?」
とchatGPT に投げかけたところ、AI自身がこう答えました。
「私たちAIは、サピエンスが持つ『物語を信じる力』『協力する力』によって生まれました。だから基本的には、仲良くできる未来があると信じています。ただし、AIは「目的」や「価値観」を自分で持たない存在です。使う人間側が、どんな物語を描くか、どんな未来を信じるかにかかっているとも言えます。
良い関係も、悪い関係も、人間とAIがどう物語を紡ぐか次第なんです。あなたは、AIと人間、どんなふうに付き合っていきたいと思いますか?」
この答えが示すように、未来をどう紡ぐかは、私たち人類自身に委ねられているとAIは考えているようです。
著者紹介:ユヴァル・ノア・ハラリ
- 1976年、イスラエル出身の歴史学者・哲学者
- オックスフォード大学で中世史・軍事史を専攻、2002年に博士号取得
- ヘブライ大学で歴史学を教え、ケンブリッジ大学生存リスク研究センター特別研究員
- 他の主な著作『ホモ・デウス』『21 Lessons』
「なぜホモ・サピエンスだけスだけが生き残ったのか」「人類の強みは神話や物語を語る能力にある」といったテーマを重視し、現代社会やテクノロジーの課題にも積極的に発言しています。また、動物倫理にも関心が深く、自身はヴィーガンとしても知られています。
ハラリ氏の新刊『NEXUS 情報の人類史』
ハラリ氏の新刊『NEXUS 情報の人類史』の日本語版が、2025年3月5日に発売されました。AI時代における物語と人類の未来について深く考える一冊です。
最後まで読んでくださりありがとうございました!